私のジャンルに「神」がいます – 真田つづる

2020年6月~11月にかけてTwitter上で盛大にバズった、同人誌を巡る女性の悲喜交々エピソード漫画が書籍化。同人に関わる読者を悶絶させる切り口のエピソードもさることながら、今後の同人界で共有されるであろう「おけけパワー中島(おけパ中島)」という概念を産みだしたことで一つのマイルストーンと言える作品である。

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夢の端々 – 須藤佑実

令和から戦後までの70年間の期間をもって二人の女性の人生を追っていく作品。「数十年単位の長い年月を掛けた関係性」という誰もが一度は書きたくなるようなテーマを戦後の日本を舞台に描くとき、それが「一緒に『いなかった』長い年月」として結実する描写に脱帽する。

百合というジャンルが「女性と女性の間にある関係・感情」を広く扱う言葉であるのなら、本作のような作品をもってジャンルが大きな可能性を持つことの証明としたい。

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バイオショック 1 (BIOSHOCK 1)

恐縮だが…… (Would you kindly......)

2007年発表。ゲーム表現にメタ的な意味を持たせたシナリオと演出が高く評価された。余談ながらアメリカでは有名な作家アイン・ランドを元ネタにする要素があることをプレイ後に知って驚いた。

本サイトはこの記事に限らずネタバレ有りで書いているので、未プレイの方がこのページを読む場合はそれを承知の上で進んで頂きたい。

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ザ・ボーイズ (The Boys) シーズン2

同タイトルのアメコミを原作としたAmazon Originalドラマ。相当にきわどい内容であるにも関わらず大ヒットした。

ヒーローものであるにも関わらず、戦闘シーンよりも現代アメリカを皮肉った描写の数々がメイン。前シーズン感想(記事)で「ヴォートのクズヒーローを一般人がなんとかして倒していく作品だと思ったのに!」とか書いたのだが、「クズヒーローの被害者となった善良な市民が復讐する」という構図ではなく、「クズの敵はまた別のクズ」という形になっているあたり、現代アメリカ社会への反映の結果自然とそうなったんだなと今は感じる。

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タイムパラドクスゴーストライター 市真ケンジ×伊達恒大 全2巻

週刊少年ジャンプ掲載。基本的な考証の甘さと、漫画家の主人公が作品を盗作する展開の割にピカレスクロマンには振らない内容で、おそらく今年のジャンプでは断トツで叩かれる作品となった。

私は判官贔屓というか、ある程度叩かれている作品はもう自分がわざわざ嫌いになることもないな……って気持ちになるからか、この作品嫌いではない。少なくとも連載を読んでいて「一体次回はどうなってしまうんだ!?」という気持ちにさせるという点では凄かったと思う。

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ユリトラジャンプ~ウルトラジャンプ百合アンソロジー~

雑誌「ウルトラジャンプ」に掲載された読み切りを集めたアンソロジー。いくつかの百合アンソロジーを読んでいるが、百合の方向性より作者の個性に振ったタイプの作品が多い本作は百合アンソロジーとしては異色であると思う(というかそもそも「読み切りの中で百合っぽい奴」を集めたものらしい)。

アンソロジーは各収録作品の短さで物足りないことも多いのだが、本作は1作1作のページ数のボリュームが多く、1巻約350ページ、2巻約440ページ、3巻約500ページもある。これは一方で紙での発行がなく電子書籍でしか読めない理由にもなっていると思われる。

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