「SF小説」タグアーカイブ

プロジェクト・ヘイル・メアリー – アンディ・ウィアー

2021年発表。『火星の人』『アルテミス(記事)』のアンディ・ウィアーの3作目となる。非常に平易な文体で読みやすくSF作品ならではの広大なスケールの話が読めるので、普段SF小説を読まない方にも勧められる。評判通りの超名作であった。

読了の際は、本作はいわゆるネタバレ厳禁作品であり、下記の感想はネタバレ全開のものであることを了承の上で読んでいただきたい。

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パラドックス・メン – チャールズ・L・ハーネス

SF作家ブライアン・オールディスがワイドスクリーン・バロックと名付けたSFジャンルのまさしく代表作。1953年刊行だが日本では2019年になるまで邦訳されていなかったため、長く幻の名作のような扱いとされていた。

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裏世界ピクニック1 ふたりの怪異探検ファイル – 宮澤伊織

「知ってる? 共犯者って、この世で最も親密な関係なんだって」

「ネット怪談×異世界探険」と題したSFサバイバルホラーだが、異世界を探検する女性コンビの百合描写にも力が入っている。コミュ障人見知り主人公の空魚(そらを)が相棒の鳥子へ送る湿度の高い視線、依存・執着を一人称でじっくり書くのが素晴らしい。根暗はやっぱりこうでなくっちゃ!

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死の鳥 – ハーラン・エリスン

アメリカSF界ではカリスマ的存在だが日本では邦訳に恵まれないハーラン・エリスンの短篇集。1冊目の邦訳である『世界の中心で愛を叫んだけもの』からなんと約40年も経過してようやく出た2冊目の邦訳であり、SFファンにとっては大御所である為に遅すぎた感が凄い。嬉しいけどなんで今更……。

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スローターハウス5 – カート・ヴォネガット

アメリカ人たちは、門から五番目の建物に引きたてられた。一階建てのセメントブロックの直方体で、正面と裏側には大きなすべり戸があった。もともとは処理前の豚をまとめる小屋として建てられたものだが、それはいま百人のアメリカ兵捕虜が住まう異郷の家になろうとしていた。(中略)建物のドアには、大きな数字がある。数字は5であった。はいる許可を与えるまえに、英語を話すたったひとりの警備兵が、街なかで道に迷った場合の簡単な住所を教えた。住所は「シュラハトホーフフュンフ」。シュラハトホーフは食肉処理場、フュンフは古き良き5である

第二次世界大戦時にドレスデン爆撃を体験した著者が、過去にも未来にも精神が時間移動するというSF要素を加えて描写する半自伝的作品。一応戦争ものというジャンルでもあるが、死を描写するたびにうんざりするほど繰り返される「そういうものだ」("So it goes.")が象徴するように、悲壮的というよりどこか皮肉めいた雰囲気で語られる。

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時間SF傑作選 ここがウィネトカなら、きみはジュディ – 大森望 編

SFマガジン創刊50周年記念ということでテーマ別に短篇集が作られた中で、時間に関するSFを集めた短篇集。いろんなパターンを収録しており、アニメやゲームでもおなじみとなった時間SFはとっくの昔にやりつくしていたんだなぁという印象を受ける。

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バービーはなぜ殺される – ジョン・ヴァーリイ

人体改造が当然となった未来世界での物語を手掛けることで知られるSF作家ジョン・ヴァーリイの短篇集。「まったく同一の外見を持った人間の集落で起きた殺人。殺したのも殺されたのもバービー」という、ヴァーリイならではの設定を持ったミステリ仕立ての表題作に興味を持って読んでみた。

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三惑星の探求 (人類補完機構全短篇3) – コードウェイナー・スミス

コードウェイナー・スミスの人類補完機構全短篇集の完結編。未訳だったものや、訳されていたものの単行本に未収録だったものなどが多い貴重な巻である。

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