早川書房が毎年発行している『このSFが読みたい!』シリーズでベストSF2023年度の海外篇第1位に選ばれた作品。1953年刊行で半世紀以上も前の作品であるが、熱心に翻訳をした一般人によって邦訳されることになった、という変わった経緯での出版となる。
「小説」カテゴリーアーカイブ
プロジェクト・ヘイル・メアリー – アンディ・ウィアー
2021年発表。『火星の人』『アルテミス(記事)』のアンディ・ウィアーの3作目となる。非常に平易な文体で読みやすくSF作品ならではの広大なスケールの話が読めるので、普段SF小説を読まない方にも勧められる。評判通りの超名作であった。
読了の際は、本作はいわゆるネタバレ厳禁作品であり、下記の感想はネタバレ全開のものであることを了承の上で読んでいただきたい。
パラドックス・メン – チャールズ・L・ハーネス
SF作家ブライアン・オールディスがワイドスクリーン・バロックと名付けたSFジャンルのまさしく代表作。1953年刊行だが日本では2019年になるまで邦訳されていなかったため、長く幻の名作のような扱いとされていた。
機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン – 富野由悠季
1988年刊。劇場アニメ版と大筋は同じだが、製作委員会に難色を示された為に無くなってしまった「アムロとベルトーチカの子供」に由来する描写が最大の特徴。
処刑少女の生きる道(バージンロード)―そして、彼女は甦る― – 佐藤真登
これは、彼女が彼女を殺すための物語。
7年ぶりのGA文庫大賞であるという一方で、女性主人公で百合要素がある点でも一部から注目される作品。定番ファンタジー設定の裏をかいた独自の世界観と、その設定と切っても切れないメノウとアカリの独自で複雑な人間関係が読者を唸らせる。
アステリズムに花束を 百合SFアンソロジー
世界初の百合SFアンソロジー。「女性同士の関係性」(注:恋愛とは限らない)という認識を元に、各作家が各々の個性をぶつける多様な9編が収録されている。
裏世界ピクニック1 ふたりの怪異探検ファイル – 宮澤伊織
「知ってる? 共犯者って、この世で最も親密な関係なんだって」
「ネット怪談×異世界探険」と題したSFサバイバルホラーだが、異世界を探検する女性コンビの百合描写にも力が入っている。コミュ障人見知り主人公の空魚(そらを)が相棒の鳥子へ送る湿度の高い視線、依存・執着を一人称でじっくり書くのが素晴らしい。根暗はやっぱりこうでなくっちゃ!
やがて君になる 佐伯沙弥香について – 入間人間
告白なんてされたのは初めてだった。 なにを考えればいいのかも分からない。 ……そして、これからずっと先に、ふと振り返ると。 最初に告白してきたのが女の子だったのは、そういう運命の暗示だったのかもしれない。
人気百合漫画『やがて君になる』(記事)のスピンオフ小説。著者は『安達としまむら』シリーズの入間人間。
本編中において「もう絶対勝利させては貰えないサブポジション」でのたうち回る佐伯沙弥香先輩が主人公。本編読んでいると主役カップルよりもずっと心情描写に印象が残るキャラで、外伝で掘り下げするとなったら他には考えられないという人物でもある。スピンオフ作品は原作知ってるとなんか違うなという違和感が出ることも多いのだが、後書きで原作者が「あまりに紛れもない佐伯沙弥香」と書いているとおりでさすがと言うほか無い。
ブギーポップ・ビューティフル パニックキュート帝王学 – 上遠野浩平
ブギーポップシリーズ第22冊目。デビュー20周年!新アニメ決定!という華々しいタイミングでの刊行となったが、上遠野浩平らしい相変わらずなマイペースエピソード。
アルテミス – アンディ・ウィアー
『火星の人』のアンディ・ウィアーの2作目。月面都市アルテミスを舞台にしたハードSFで、舞台設定は非常に魅力的であると思うのだがなんというか全体に流れる軽妙なノリが個人的に合わなかった。