SF作家ブライアン・オールディスがワイドスクリーン・バロックと名付けたSFジャンルのまさしく代表作。1953年刊行だが日本では2019年になるまで邦訳されていなかったため、長く幻の名作のような扱いとされていた。
「小説」カテゴリーアーカイブ
機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン – 富野由悠季
1988年刊。劇場アニメ版と大筋は同じだが、製作委員会に難色を示された為に無くなってしまった「アムロとベルトーチカの子供」に由来する描写が最大の特徴。
処刑少女の生きる道(バージンロード)―そして、彼女は甦る― – 佐藤真登
これは、彼女が彼女を殺すための物語。
7年ぶりのGA文庫大賞であるという一方で、女性主人公で百合要素がある点でも一部から注目される作品。定番ファンタジー設定の裏をかいた独自の世界観と、その設定と切っても切れないメノウとアカリの独自で複雑な人間関係が読者を唸らせる。
アステリズムに花束を 百合SFアンソロジー
世界初の百合SFアンソロジー。「女性同士の関係性」(注:恋愛とは限らない)という認識を元に、各作家が各々の個性をぶつける多様な9編が収録されている。
裏世界ピクニック1 ふたりの怪異探検ファイル – 宮澤伊織
「知ってる? 共犯者って、この世で最も親密な関係なんだって」
「ネット怪談×異世界探険」と題したSFサバイバルホラーだが、異世界を探検する女性コンビの百合描写にも力が入っている。コミュ障人見知り主人公の空魚(そらを)が相棒の鳥子へ送る湿度の高い視線、依存・執着を一人称でじっくり書くのが素晴らしい。根暗はやっぱりこうでなくっちゃ!
やがて君になる 佐伯沙弥香について – 入間人間
告白なんてされたのは初めてだった。 なにを考えればいいのかも分からない。 ……そして、これからずっと先に、ふと振り返ると。 最初に告白してきたのが女の子だったのは、そういう運命の暗示だったのかもしれない。
人気百合漫画『やがて君になる』(記事)のスピンオフ小説。著者は『安達としまむら』シリーズの入間人間。
本編中において「もう絶対勝利させては貰えないサブポジション」でのたうち回る佐伯沙弥香先輩が主人公。本編読んでいると主役カップルよりもずっと心情描写に印象が残るキャラで、外伝で掘り下げするとなったら他には考えられないという人物でもある。スピンオフ作品は原作知ってるとなんか違うなという違和感が出ることも多いのだが、後書きで原作者が「あまりに紛れもない佐伯沙弥香」と書いているとおりでさすがと言うほか無い。
ブギーポップ・ビューティフル パニックキュート帝王学 – 上遠野浩平
ブギーポップシリーズ第22冊目。デビュー20周年!新アニメ決定!という華々しいタイミングでの刊行となったが、上遠野浩平らしい相変わらずなマイペースエピソード。
アルテミス – アンディ・ウィアー
『火星の人』のアンディ・ウィアーの2作目。月面都市アルテミスを舞台にしたハードSFで、舞台設定は非常に魅力的であると思うのだがなんというか全体に流れる軽妙なノリが個人的に合わなかった。
死の鳥 – ハーラン・エリスン
アメリカSF界ではカリスマ的存在だが日本では邦訳に恵まれないハーラン・エリスンの短篇集。1冊目の邦訳である『世界の中心で愛を叫んだけもの』からなんと約40年も経過してようやく出た2冊目の邦訳であり、SFファンにとっては大御所である為に遅すぎた感が凄い。嬉しいけどなんで今更……。
スローターハウス5 – カート・ヴォネガット
アメリカ人たちは、門から五番目の建物に引きたてられた。一階建てのセメントブロックの直方体で、正面と裏側には大きなすべり戸があった。もともとは処理前の豚をまとめる小屋として建てられたものだが、それはいま百人のアメリカ兵捕虜が住まう異郷の家になろうとしていた。(中略)建物のドアには、大きな数字がある。数字は5であった。はいる許可を与えるまえに、英語を話すたったひとりの警備兵が、街なかで道に迷った場合の簡単な住所を教えた。住所は「シュラハトホーフフュンフ」。シュラハトホーフは食肉処理場、フュンフは古き良き5である
第二次世界大戦時にドレスデン爆撃を体験した著者が、過去にも未来にも精神が時間移動するというSF要素を加えて描写する半自伝的作品。一応戦争ものというジャンルでもあるが、死を描写するたびにうんざりするほど繰り返される「そういうものだ」("So it goes.")が象徴するように、悲壮的というよりどこか皮肉めいた雰囲気で語られる。