SFマガジン創刊50周年記念ということでテーマ別に短篇集が作られた中で、時間に関するSFを集めた短篇集。いろんなパターンを収録しており、アニメやゲームでもおなじみとなった時間SFはとっくの昔にやりつくしていたんだなぁという印象を受ける。
「小説」カテゴリーアーカイブ
ブギーポップ・ダウトフル 不可抗力のラビット・ラン – 上遠野浩平
上遠野浩平のブギーポップシリーズ21冊目。
九連内朱巳が統和機構の実験と称して身寄りのない少年少女を半ば慈善事業的に助けていたら、その中にMPLSがいててんやわんやという話。
ナチュラル・ウーマン – 松浦理英子
女性同士の性愛というセクシュアリティを扱った小説。発表当時は玄人受けというか一部で注目を浴びるに至るだけだったが、その後評価が高まったのか2回映画化されている。
わたしを離さないで – カズオ・イシグロ
先日ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロの代表作。特殊な人生を強いられた主人公らから生命や倫理を問う文学的な内容であるが、その前提となる設定がしっくりこなかったこともあってか、個人的にはそれほど。
バービーはなぜ殺される – ジョン・ヴァーリイ
人体改造が当然となった未来世界での物語を手掛けることで知られるSF作家ジョン・ヴァーリイの短篇集。「まったく同一の外見を持った人間の集落で起きた殺人。殺したのも殺されたのもバービー」という、ヴァーリイならではの設定を持ったミステリ仕立ての表題作に興味を持って読んでみた。
三惑星の探求 (人類補完機構全短篇3) – コードウェイナー・スミス
コードウェイナー・スミスの人類補完機構全短篇集の完結編。未訳だったものや、訳されていたものの単行本に未収録だったものなどが多い貴重な巻である。
サザーン・リーチ1 全滅領域 – ジェフ・ヴァンダミア
こんな情報を調べる程度なら、だれであっても、たいしてむずかしいことではないかもしれない。それはわかっている。だが、この日誌を読む人間には、わたしみずからこう記すことで、わたしが客観的で信用のおける人間であるとみなしてもらえるのではないかと思う。 (p90)
2015年ネビュラ長編小説賞受賞作品で映画化が決まっている。サザーン・リーチ3部作の1巻目で、異常な生態系を有する謎の領域<エリアX>に入った調査隊のメンバーが目にする異様な光景を書いているが、その設定からは想像もつかないほどに主人公の内面描写に比重が置かれている作品でもある。
アンドロイドは電気羊の夢を見るか? – フィリップ・K・ディック
海外SFのフィリップ・K・ディックの代表作の一つで、映画『ブレードランナー』の原作として有名な作品。賞金稼ぎであるリック・デッカードにアンドロイド狩りを通じて起きていく心境の変化を描く。
ウィッチャー Ⅰ エルフの血脈 – アンドレイ・サプコフスキ
3作目の「ウィッチャー3 ワイルドハント」が大ヒットしたウィッチャーシリーズの原作小説。既に長編1巻目のみ「エルフの血脈 (魔法剣士ゲラルト)」というタイトルで翻訳されていたが、2巻以降が無くゲームが大ヒットした影響でプレミア状態になっていた状態だったものを、専門用語をゲーム版に準拠した上で長編全5巻が翻訳される運びとなった。
製造人間は頭が固い – 上遠野浩平
来年でデビュー二十周年になる作家、上遠野浩平はずっと共通する世界観で作品を作り続けてきたが、ここで突然『実は作中の合成人間はこの製造人間が作っていたんです』という衝撃的な設定が明らかになる。
なお珍しいことに、この単行本の発売を記念して早川書房からインタビューを受けた記事が公開されている(新作『製造人間は頭が固い』刊行記念 ~上遠野浩平インタビュー~)。いっつも自分のスタイルで貫いてしまいがちな上遠野浩平が普通に敬語で話している、なんか新鮮なやり取りである。