青年誌寄りの味わいと美麗な絵の著者の初連載ということで大期待だったが、2巻完結になってしまいショックを受けた。歪んでいるともいえる深い愛情を持ち味とする著者が、普段よりマイルドにしつつも暗い感情を描き上げている。なお元カノと縒りを戻す元サヤ百合という珍しいジャンルの作品でもある。
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写真が大好きな転校生・光と、彼女がみた元カノたちの百合物語。
光は、憧れの先輩であり写真家の葉山を追いかけてきた転校初日に クラスで二人の友だちができる。モデルの夢を追う寧々と、ギャル風の雨音。
絵になる二人を並べて早速撮影していた光だが 先輩から「寧々と雨音は中学時代付き合っていた」という 女子同士の過去の恋を聞いてしまい…。 一迅社
百合姫で毎月楽しみに読んでいたのであるが打ち切りにあってしまいショックを受けた作品。打ち切りになる作品は正直なところある程度予想が付くのだが、本作はまったくその予感を感じられなかったので意外だった。
百合姫関連の漫画家は同人で人気であったり百合関連の賞を受賞してデビューしている人が多いのだが、岩見先生は最初アフタヌーン四季賞の大賞をとってデビューしているという少し変わった出自がある(まぁその後に翡翠賞(百合姫の漫画賞)取って百合姫来るんだけど)。
アフタヌーン四季賞で大賞を取った、の時点で知ってる人は予想が付くと思うのだが、作風はオタク向けの『萌え』よりも青年誌的な嗜好に寄っているところがある。端的には欠点とも取れる人間の業を『人間の味』として積極的にクローズアップしようとする指向性を持つ、というのかな。なので写真という人間の功罪を容赦なく形に残してしまう題材はピッタリだった。
本作って雨音という『辛くても我慢して明るく振る舞うけど、一人になるとポロポロ泣き出してしまう』という曇らせ隊の誘蛾灯みたいな女の子を巡る話だったと思う。この娘を中心に他の娘の黒い感情が吹き上がっているところに、光というそれを写真に収める人間がやってくるという……。
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打ち切りにならなければ、おそらく本来は雨音と寧々がもう一度関係を構築する様を主人公の光が収めていく話だったと思うんだよなぁ。上の方でも引用した作品紹介に『写真が大好きな転校生・光と、彼女がみた元カノたちの百合物語』ってまさしくそのまんまのこと書いてあるし。
その予想が当たっていれば、まさしくその関係を絵に表した1巻の表紙は見事だったと思う。と同時に「誰と誰が結ばれるが明白でないとorこの先どうなるのかが不透明だと、安心して読んでくれない」という風潮に沿っていなかったのかもな、という気もしている。
『百合作品で女性主人公が恋愛に参加しない』ってすごい大胆で面白いと思うんだけどなぁ。凝った仕掛けやどうなるのかわからない展開を歓迎しているので、こういう作品を育てることが出来ないのは業界自体が不安になるよなぁ……と思ってしまうのである。もっとも「百合姫PowerPushPVキャンペーン」の第1弾に本作を選んだんだから、編集的にも期待掛けてたと思うんだけどね。
まぁそんな義憤のようなこと散々書いておきながら、読んでる最中は「むっ!岩見センセったら、またお尻と太モモ描いて!んも~!」とか言いながら読んでいたことも事実ではあるのだが……。
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