さよならローズガーデン 全3巻 – 毒田ペパ子

1900年のイギリスを舞台にした、英国貴族令嬢と日本人メイドを描く百合漫画。国籍・身分という障害から生まれるドラマと、ヴィクトリア時代に対する作者の熱烈な愛のなせる描写が織りなす作品。

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日本人メイドと英國令嬢。薔薇の庭で綴られる、荊に閉ざした想いとわたしたちの秘密。

1900年、イギリス――。憧れの作家に師事するため、日本からイギリスへやってきた九條華子。彼女は拠り所のない異国の地で、偶然出会った貴族令嬢アリス・ダグラスのもとでメイドとして仕えることになる。恩人であり、本好きの同士でもあるアリスに報いようと、夢に仕事に奮起する華子。そんな彼女にアリスは衝撃の言葉を告げる……。 pixivコミック

最近になって完結して評判が良かったので読んだ。著者の毒田ペパ子先生は実は百合アンソロジーで度々見かけてはいたのだが、英語表記でDr. Peppercoって書くんだな。表紙を見て初めて知った。

読んでみて『作画のカロリーの高さ』にクラクラ来た。1900年のイギリス貴族とその生活が猛烈な密度で描き込まれている。1巻のあとがきに「これでもかと好きなものをつめこんでいる漫画です」って書いてあるけどさもありなん。伝わってくる……伝わってくるよペパ子先生……。こんだけ描けりゃ楽しいだろうねぇ。

ネット上で「バッドエンドになるかと思ったらハッピーエンドになって良かった」という書評を多数見かけて、「ああ、一般的にはそういう読み方するのか」ってなった。作中で言及される「マーサズレディ(※)」が「結婚を機に別れた二人が数十年後に再開する」という内容で華子とアリスの未来を暗示しているから、普通に読んだらそういう予想をするのか。実際にはミスリードなんだけど、私は「ミス」の部分すら読めてまへんでした……。

それで評判通り凄い綺麗に完結する。描くべきこと描いて予定通りに着地できた印象だ。恋愛主体の作品は3~4巻程度で纏めるべきだと思っているが、まさしくそういう作品である。気になるのはキーパーソンだと思っていたイライザ先生がそんなに描写されないで終わったのが意外だったくらいか。

(※)余談ながら「マーサズレディ」、作中作かと思ったら実在する作品で

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ということなのだそうな。作中には他にもオスカー・ワイルドやシャーロック・ホームズの話題が出てきたり、ペパ子先生博識だな……と思わせる描写がたくさん出てくる。あの時代への愛のなせる業なんだろうなぁ。

なお本作は朗読劇という珍しいメディア展開をしている。

朗読劇『さよならローズガーデン』

『やがて君になる』が舞台化したときも驚いたが、アニメ化・ドラマCD化以外でこんな展開があるのは驚き。こういう企画立つくらいに人気あったのに作品が締まるべきところで完結させたの偉い。

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