百合姫の単行本未収録読み切り漫画

世界唯一の百合専門雑誌『百合姫』に掲載された読み切りで、単行本には未収録の為その号を読む以外に閲覧手段が無い作品の感想をまとめた。対象期間は電子書籍化した2017年1月号以降で、新しいものから順番に古くなるようにしている。

追記:……という触れ込みでこの記事を作ったのだが、私と同じようにあの読み切りを単行本で読めるようにしたいという要望が高かった為か、『ユリビュート 百合姫読切再録集』という再録本が(電子書籍のみの発行ではあるが)出版された。

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そういうわけでこの記事に掲載していた、純玲『スノウトーク』、さかなや『蔓日々草』、のちむゆ『わたしのこい』の3篇の感想はそっちの記事に移すことにした。めでたいことではあるが、この記事はちょっとスカスカになっちゃったかもね。

作品毎の感想

くわばらたもつ - お前に聴かせたい歌がある

「これ埋めるの手伝って欲しくて」「埋め??……今から?」「今から」「…中身は?」「私の死体」

2019年12月号掲載。百合厨、死体を一緒に埋める共犯者好きすぎ問題……。この話本当にエモい。エモ過ぎる。かつては情熱を持っていたが今はうだつの上がらない趣味ミュージシャンの主人公(30歳独身女性)のところに一緒にバンドをやっている一回り年下の娘がやってきて……というところから始まって冒頭で引用したシーンへ。

百合とか恋愛とはまた別にテーマが有る作品はやっぱり好きだ。本作品の内容は確実にいろんな方面の人に「刺さる」と思う。「将来のことなんかいいじゃん!気軽で!」的なこと言ったばっかりのやよさんが、「何があっても一緒にいてくれる?」ってふみちゃんに言われた途端、顔がこわばるのとかエグいよな。なんかこういうこと書くと百合が薄いような印象を持たれそうだがとんでもない話で、やよさんの締まりの無い顔の奥にある「くすぶり」を見続けていたふみちゃんの胸中を思うと苦しくなる。

一番最後のページの「絵」というか構図って「青年漫画とかで見る奴だろこれ……」と思わずにいられない。百合姫でこういうのが見られるなんて……。

土室圭 - 白紙の彼方

どこかで何かが劇的に変わる 変わってしまうと思っていたけれど 思った以上に私の日常は強固なものだった

2017年4月号掲載。これ読んだとき「マジですげえ人が来たぞ……」と思ったが、編集部もそう思っていたのか同年12月号から『徒然日和』が始まり、絶賛連載中なのはこのページを読んでいる人ならご存じのことだろう。最初から漫画家として完成されている感が凄いんだが元々何されてた方なんだろうか?

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田舎の女子高生の日常を丁寧に描いた『徒然日和』とはまた違った作家性を感じる作品。人生の節目の一つが過ぎて色々あったけど人生はこれからも続いていくよ、という青年誌的ともいえる描写が個人的には百合描写よりも印象に残る。百合漫画という紹介をしなくても広く受け入れられそうな内容だ。

ちなみに土室先生、当時は『じょい』というペンネームだったようだ。さすがにシンプルすぎて検索するの大変だから、編集に作家としての名前付けろって言われたんだろうか。絵が上手い人ほど名前の検索性低い傾向あるんだよな……。

https://twitter.com/joint06/status/832192492938223617

終わりに

見てみると全部恋愛が上手くいかない話で自分の好きな傾向が丸わかりで笑ってしまう。個人的な好み抜いてもそういう話の方が短編では印象に残るんだよな。連載でそういうオチにするのは勇気が要るしさ。

余談ながら一迅社は電子書籍セールの度に昔の百合姫が格安になるセールをやっているので、その時期を見計らって購入するのが一応お勧めである。なんにせよ電子書籍ですぐに追えるのは良い時代になったもんです。

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