2021年発表。第11回アガサ・クリスティー賞受賞、2022年本屋大賞受賞作品。『第二次世界大戦下のソ連において女性のみで構成された狙撃部隊』という魅力的ながら難しい題材を見事に書き上げている。

作品紹介

第11回アガサ・クリスティー賞大賞受賞作。独ソ戦、女性だけの狙撃小隊がたどる生と死。

独ソ戦が激化する1942年、モスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマの日常は、突如として奪われた。急襲したドイツ軍によって、母親のエカチェリーナほか村人たちが惨殺されたのだ。自らも射殺される寸前、セラフィマは赤軍の女性兵士イリーナに救われる。「戦いたいか、死にたいか」――そう問われた彼女は、イリーナが教官を務める訓練学校で一流の狙撃兵になることを決意する。母を撃ったドイツ人狙撃手と、母の遺体を焼き払ったイリーナに復讐するために……。同じ境遇で家族を喪い、戦うことを選んだ女性狙撃兵たちとともに訓練を重ねたセラフィマは、やがて独ソ戦の決定的な転換点となるスターリングラードの前線へと向かう。おびただしい死の果てに、彼女が目にした“真の敵"とは? - Hayakawa Online

前置き

超ウルトラスーパー大ヒット話題作なので絶対読まないといけないなぁと思って実際読んでいたのだが、大体3割くらいのところで止まったままだった。読書家界隈では「この本読んでない奴は読書してることになんてならないよな！」というレベルだったので、まぁ実際に私は読書してなかったんですが……。

年明けに『プロジェクト・ヘイル・メアリー』読み切ったので、「この勢いで積読を消化して死ぬときの未練を潰して行こう」とばかりに次の書籍を選んだ。実は選んだのは「三体」だったのだが、kindle paperwhiteで何故かダウンロード出来なかったので本作にした。評判になるのも頷けるほどの名作であり、真摯に書かれた本作に対して大分いい加減な読者であった。

3割で止まっていたのは別につまらなかったとかではなく、本作に限らず読書他に集中できない時期が続いたからという感じで、今回も6割くらいから風呂に入ってkindle paperwhiteでずっと読み続けて勢いで読了した。「Done is better than perfect」の精神でやらないと終わらないんだなと思う一方で、やはりこういう作品にはいい加減に接したくないなぁと思う。それでも「どんなに良い物語でも自分の側に盛る器が無ければ取りこぼしてしまうから今読むのは嫌だ」を止めたから読了出来たのも事実だ。自分に盛る器が生まれるような元気は、自分には訪れないのだから最初から諦めれば良かったのだ。

感想

第11回アガサ・クリスティー賞受賞！初の選考員全員が満点！というわけで巻末には選考員たちの絶賛の声が掲載されている。単行本出た時点では受賞していないと思うので、これは電子書籍版に後から追加されたものなのかな？早川書房の電子書籍、巻末の解説とかが権利だかなんだかで載らなかったりするのだが、これはバッチリ載っている。しかし、デビュー作でこんな大絶賛されるのって良いなぁ。「望まれて産まれてきた」って感じだ。

面白いと思う反面であんまり乗れない部分があったのは、終盤のセラフィマが「自分は女性を代表して戦ったいるんだ」的なことを言い出したあたり。そんな話だったっけ？ってなった。そう思わないとやってられないという部分はあるかもしれないけど、なんか現代目線かなって言うか。

その一方で戦争が人間に及ぼす影響というテーマはしっかり刺さったと思う。ラストのミハイルがもの凄く悲しい。再開シーンでの「彼は村で一番優しい少年だった」というセラフィマの印象もきっと間違いでは無いだろうにあの結末……。

他には作品のテーマを表現して結実できる物語を大部分が史実となる背景で書く手腕が凄いと感じた。戦争アニメならライバル同士が何度も戦ったりするけど、第二次世界大戦の史実を守りながら同じ敵同士で何度もやり合うのってかなり気をつけないと書けないよね。

終わりに

史実に対して真摯に書かれた作品だと思うが、オタクが読むと脳内イメージがストライクウィッチーズになりがちなの良くないなぁ。

あとユリアンが見せたタバコマジックが「承太郎がやってて、モテ王サーガでパロられた奴ね」って思ってたらそのシーンが伏線で、クライマックスで再登場したので別に誰も悪くないんだけど「ここでか……」ってなった。知らないと素直に「おお！」ってなるよね。やっぱり良くないなぁ。（←全然反省が見られないヤツ）