SFマンガ傑作選 – 福井健太編

1970年代を中心に日本製SF漫画の傑作短編を集めたアンソロジー。

色々な作品が掲載されているが、個人的には佐藤史生の『金星樹』がお気に入り。人間の常識的な感覚と科学的事象の間に産まれる無情なギャップから人間ドラマが生じる、まさしくSFならではの傑作である。

Sponsored Link

手塚治虫、松本零士、筒井康隆、萩尾望都、石ノ森章太郎、諸星大二郎、竹宮惠子、山田ミネコ、横山光輝、佐藤史生、佐々木淳子、高橋葉介、水樹和佳子、星野之宣……SFマンガの黄金期ともいうべき1970年代の作品を中心に綺羅星のごとき14編を収めた、ベスト・オブ・ベストの傑作マンガ・アンソロジー! 編者による各作品解説と、30ページを超す巻末のSFマンガ史概説も充実。編者=福井健太

手塚治虫「アトムの最後」
松本零士「ヤマビコ13号」
筒井康隆「急流」
萩尾望都「あそび玉」
石ノ森章太郎「胎児の世紀」
諸星大二郎「生物都市」
竹宮惠子「ジルベスターの星から」
山田ミネコ「冬の円盤」
横山光輝「昆虫惑星」
佐藤史生「金星樹」
佐々木淳子「リディアの住む時に…」
高橋葉介「ミルクがねじを回す時」
水樹和佳子「樹魔」
星野之宣「残像 AN AFTER IMAGE」
SFマンガ史概説 - 東京創元社

SFファンなので存在を知って速攻でポチってしまった。SF愛好家にとってはお馴染みの紫背表紙の東京創元社文庫なのに開くと漫画という、普段の東京創元社SFに慣れている人間からすると異色な本。600ページ超えで3cmくらい厚さがある鈍器本である。

初っぱなの手塚治虫『アトムの最後』でいきなり凄いパンチを食らってしまう。文字通り鉄腕アトムの最後が描かれる話なのだが猛烈に無情な話なのである。アトムじゃなかったらそんなに衝撃受けてなかったんだろうけど、アトムでこれやるか……。「劇画ブームに伴って大人向けの作品を手がけ始めた時代の作品なのかなぁ」と調べてみたが、劇画ブームが60年代後半、本作が1970年発表。有名な『ブラック・ジャック』が1973年連載開始だそうな。

Sponsored Link

クソ欝漫画の『火の鳥』をライフワークとして描いた作家の本領発揮と言ったところか。小学生の時に図書室にあった『火の鳥』を読んだときの衝撃を思い出してしまう。私は仏教的な無常観をあの作品でまず受け取ったと思うのだが、あの時の感情をまさかこんな形で思い起こされようとは……。

冒頭でも書いたとおり、佐藤史生の『金星樹』が個人的に一番好き。解説で伴名練の『ひかりより速く、ゆるやかに』等の時間停滞テーマの先駆けとしているが、自分は小林泰三の『海を見る人』を思い出した。更に両者の年齢差が縮まるというロバート・A・ハインラインの『夏への扉』要素もある。これアーシーの存在が良い味出してるなぁ……。

わたしはそれだけは神に感謝してもいいと思ってるよ

やっぱ、俺……男のこういう感情が描かれてる作品、好きだ……!(←何の告白やねん)

ところで筒井康隆の『急流』ってやっぱりジョジョのメイド・イン・ヘブンの元ネタなんだろうか?まぁ星新一とかで同じようなネタいっぱいあるか。

Sponsored Link

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です