バーフバリ 伝説誕生 / 王の凱旋

2015年と2017年に前後編として公開されたインド映画。豪快にもほどがある「そうはならんやろ」アクションの数々に驚愕し、向こうの人もこういうキャラとお話が好きなんだなぁという感慨に浸っていたら、歪と思えた構成から意外なカルチャーショックを受けることになった。

Sponsored Link

作品紹介

伝説の戦士バーフバリの愛と復讐の物語を壮大なスケールで描いた「バーフバリ」2部作の前編で、インド映画として初めて全米映画興行収入ランキングでトップ10入りを果たし、日本でも半年以上にわたり上映されるなどロングランヒットを記録した「バーフバリ 伝説誕生」の完全版。日本でも劇場公開された138分のインターナショナル版に、ミュージカルシーン「マノハリ」など合計21分に及ぶシーンが追加され、上映時間は159分となっている。

巨大な滝の下で育った青年シヴドゥは、滝の上の世界に興味を抱き、ある日、滝の上へとたどり着く。そこで美しい女戦士アヴァンティカと出会い、恋に落ちたシヴドゥは、彼女の一族が暴君バラーデヴァ統治する王国と戦いを続けてることを知り、戦士となって王国へ乗り込んで行くのだが……。 - 映画.com

前置き

一時期、Twitter上で「これを見ずには死ねない!」「見ないと一生後悔する!」ばりに、バズっていたのでどこかで見ようとは思っていた。なんか1の時点ではそんなでも無かったけど、2の時に大盛り上がりしたらしい。

2部作で前編が「伝説誕生」、後編が「王の凱旋」。なぜかAmazon Prime Videoに前編だけ、Netflixに後編だけあった。タイトルでどっちが1なのかハッキリしないのは止めてほしいんだよなぁ。まぁ伝説誕生っていかにも最初のタイトルだけどさ。あと「完全版」があり、通常版がサブスク対応で完全版はレンタルじゃないと見られない感じらしい。そういうわけで通常版見たのかというと前半はそうで、後半はそうでない。なんと中途半端に見ていた状態だった後編が2/28にNetflixでの配信を終了してしまい、しょうがないのでAmazonで完全版をレンタルしたのだった。しょうもない……。

ちなみに作品紹介で映画作品の引用するとき、いっつも映画.comのお世話になっているのだが、完全版のページしかなかったので文章が完全版の内容になっているのはご容赦願いたい。公式のホームページ(http://www.baahubali-movie.com/)もあるけど、今時TLS(SSL)使ってない(httpsではなくhttpになっている)のよね。

感想

インド映画ということで、こういうエスニックな文化で作られた作品見ると、どのくらい我々の常識と乖離しているものか気になってしまう。序盤で主人公がご神体を地面から剥がしたとき、向こうの文化的にこれ大丈夫なのかなとおもったけど、別に問題なかったっぽい。これが「タイで仏像を壊した」とかだったら家に火を付けられてるよな(偏見)。インド映画と言えば歌とダンスという偏見を持っていたが本作を見て偏見ではないと分かった。なんかすごいミュージカル的というか、キャラクターの心情表現としてしょっちゅうこれを採用する文化なんだな。

事前には聞いていたが全体的に「そうはならんやろ」という感じのアクションがてんこ盛り。整合性とか考えるよりこの方が恰好ええやろと言わんばかりのハチャメチャぶりで、敵キャラがしょっちゅうワンピースの雑魚キャラみたいに吹っ飛ぶ。このダイナミックさがどんどん開き直っていって、あの伝説の「弾性のあるヤシの木の反動をつかい、円陣を組んだ盾兵ユニットが砲弾のように城に突入する」が終盤に登場するわけである。この映画を何時間も見てラストに至るときにはもうあの荒唐無稽さを受け入れる準備が視聴者に備わっている、という意味も含めてあのシーンは本作のアクションイメージを本当に良く表していると思う。

Sponsored Link

さてそんな感じなのだが、本作で一番気になるのはお話の尺の取り方の配分が大分おかしい、ということだ。過去編パートがいくら何でも長すぎる。本当はバーフバリ(=父親の方のアマレンドラ)のエピソードを前編、シヴドゥ(=バーフバリJrのマヘンドラ)の現代編を後編にする予定だったのを、クリフハンガーで前編を終わらせるべく無理矢理この構成にしたんじゃないか、と思ってしまう配分だ。確かにみんな大好き最強ジジイの「バーフバリは自分が殺した」発言は衝撃的なラストではあったけどさ。そっから後編見たらしばらく「ウチの甥はなんも知らんもんで~、あッ腕折った!」とか言ってるから別の意味でビビったぞ。

結果それぞれの世代で1と2にしなかったせいで、視聴者的には「現代編が本編なのに過去編が長すぎて全然本編始まらない」って認識になってると思う。過去編が終わって現代の時間軸になったとき「主人公たちの目的の説明に3時間くらい使ったのに、その目的の達成に使える時間があと30分しか無いぞ!」って愕然とした。この尺の使い方で当然ながら、必然的に主人公よりも敵キャラの方が掘り下げが深い謎の構成になってるんだよなぁ。そういうわけで主人公であるはずのシヴドゥが、最終的には物語を完結させるための舞台装置のように映ってしまう。

……と書いたのだが、調べていたら「インド文化的にはバーフバリ親子は両方ともシヴァの化身で実質的に同一人物という認識なので、片方だけキャラ薄いみたいな感じは向こう的にはあんまり無い」みたいなことを聞いて驚愕した。これが本作で一番のカルチャーショックだ。文化の違いって本当に意外なところで出るな。

過去編は面白いけど現代編につながる動機の整合性とかを重視した結果、1では賢帝的なキャラ付けだったシヴァガミが2ではお話の都合でヒステリックな節穴みたいになってしまったりしているのは残念。前半とのギャップがありすぎてカッタッパも「バーフバリ様の意中の人を見抜くとは国母様スゲぇ!えっ?違う?」って勘違いしてるじゃねえか。

あとバラーラデーヴァが「しょうもないことたくさんやってる情けない王子」であるエピソードを山ほどやるせいで、「こいつがラスボスになるしかないんだけど、こいつがラスボスかぁ……」という気持ちになる。なんか「能力は高いが手段を択ばない残忍な性格から民の支持を集めることが出来なかった」的なキャラにすれば良かったのにな。オタクって「主人公にしょっちゅう突っかかってくる嫌味なキャラが全員同性愛者に見える」という良くない癖があるので、こういうキャラ付けにすると「本当はバーフバリのことが好きだった」ように見えてしまうんだよな。実際バーフバリ居なくなった後、抜け殻みたいになってもおかしくなさそうに見えるぞ。

終わりに

予想もつかないところでカルチャーショックを受けたが、Twitterで何度も見た伝説のシーンを実際に見れてよかった。なんとなく『RRR』が続編なのかと思っていたのだが、監督は同じであるもののインドの独立運動の英雄となった実在の人物を扱った別の作品になんだそうな。やっぱりインド独立運動でも「そうはならんやろ」アクションになってるんですかね?

Sponsored Link

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です