アイアンマン:エクストリミス – ウォーレン・エリス

映画アイアンマン3の原案とされる作品であるがエクストリミスが登場するくらいでほとんど別物。映画版が普通の人間に戻っていったのと対照的に、こっちは自分の体にエクストリミスを取り入れ、人間を止めて行くところまで行ってしまう怖さがある。

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使用者に驚異の力をもたらす、禁断のテクノロジー”エクストリミス”。かつてない強敵の出現に、アイアンマンはその使用を決意する! 国際的な巨大企業の経営者にして世界有数の頭脳の持ち主である大富豪トニー・スターク。人々の耳目と羨望を集め続けてきた彼のもう一つの顔は、黄金のアベンジャーこと”インビンシブル”アイアンマン。だが、とある先端技術の盗難事件をきっかけに、彼の人生は大きな転換を迎える事となる。そのキーワードは「エクストリミス(死の際にて)」。 - ヴィレッジブックス

映画『アイアンマン3』(記事)で登場したバイオテクノロジー、エクストリミスが登場する作品で、同映画が放映されるのに合わせて邦訳されている。ただし同じ技術が出てくるって言うぐらいでストーリーは全然別物。原案ってくらいか。収録されているのは「Iron Man Vol.4 #1-6」で、第4期の最初の6話が掲載されている。

技術と軍事に関する倫理や業についてのテーマが根底に流れていて、主人公のトニー・スタークは冒頭のドキュメンタリー撮影から自分が関わってきた軍事開発で死を撒き散らしてきたことを指摘される。映画版でもその傾向はあるものの、3部作のラストである『アイアンマン3』において胸のリアクターを外して普通の人間に戻り「技術自体に善悪は無い。使う人間が正しくあらねばならないんだ」みたいな割と明るめの締めになるが、こっちは方向性がちょっと違う。普通の人間に戻るどころかエクストリミスを自らの肉体に投与するのだが、スーツの下地となるアンダーシースは極限まで圧縮して中空にした全身の骨の中に隠し、スーツ装着時には体に穴を開けてそれを展開した上で遠隔操作した外骨格が飛んできて自動装着されるというかなり人間止めてる状態になる。脳がネットワークにリンクした完全にサイボーグといった体で、行けるなら行けるところまで行ってしまう怖さがある。

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ラストにはなかなか意外なオチが待っている。パトレイバーで「グリフォンがわざわざ目立つ様に戦っているのは『報道陣がタダでCMを流してくれる』から」って言うのとおんなじだな。ただマーベルユニバースでそんなことやったら科学を超えた宇宙パワーみたいなの持った奴らが来てもおかしくないのでちゃんと本人来てくれてよかったねと思わないでもない。

黒幕に同じ穴の狢と呼ばれたアイアンマンが「それでも私は努力している。朝になって、洗面台の鏡に映る自分の顔を真正面から見つめられるように……」と返すのだが、同類であることを否定してはいないところが映画とは方向性が違う印象だ。兵器に関わる技術者として生きていくのならその危うさとはずっと付き添っていかなければならないという事実を前提とした表現で個人的には映画よりも好感が持てる。

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