処刑少女の生きる道(バージンロード)―そして、彼女は甦る― – 佐藤真登


これは、彼女が彼女を殺すための物語。

7年ぶりのGA文庫大賞であるという一方で、女性主人公で百合要素がある点でも一部から注目される作品。定番ファンタジー設定の裏をかいた独自の世界観と、その設定と切っても切れないメノウとアカリの独自で複雑な人間関係が読者を唸らせる。

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この世界には、異世界の日本から『迷い人』がやってくる。だが、過去に迷い人の暴走が原因で世界的な大災害が起きたため、彼らは見つけ次第『処刑人』が殺す必要があった。
そんななか、処刑人のメノウは、迷い人の少女アカリと出会う。躊躇なく冷徹に任務を遂行するメノウ。しかし、確実に殺したはずのアカリは、なぜか平然と復活してしまう。途方にくれたメノウは、不死身のアカリを殺しきる方法を探すため、彼女を騙してともに旅立つのだが……
「メノウちゃーん。行こ!」
「……はいはい。わかったわよ」
妙に懐いてくるアカリを前に、メノウの心は少しずつ揺らぎはじめる。
――これは、彼女が彼女を殺すための物語。 – GA文庫

「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」から7年ぶりのGA文庫大賞に輝いた作品(余談だが帯の賞賛コメントも「ダンまち」作者の大森藤ノが書いている)。元々は小説投稿サイト「小説家になろう」で掲載していた(参考リンク:佐藤真登さんのマイページ – 第11回GA文庫大賞≪大賞≫受賞)作品で、著者は他にも同じく掲載していた「嘘つき戦姫、迷宮をゆく」を商業で出版している。

百合クラスタ内では登場人物がほとんど女性の百合小説として描かれていることが発売前から話題になっていた。なにせライトノベルジャンルにおいては女性主人公自体が鬼門で、作家が乗り気でも大抵編集から「売れないので無理」と止められるのが常であると言われている。そんな状況の中、久々のGA大賞受賞という誉れを得た作品というわけで興味を持って読んでみた。

胸焼けしそうないかにもな異世界転生ものの切り口から入り、鮮やかにそれを翻してみせる冒頭が象徴するように、いわゆる「なろう系」ファンタジー小説のお約束を裏を突いた設定を独自の世界観に上手く落とし込んでいる。一方で展開は凄く王道で、この人物が悪役だなというのも(メタ的に見るとそうじゃないと話にならないだろうから)大体感づいてしまうが、そうした部分には奇をてらわず、ピンチ・逆転の定番のストーリーをしっかり踏襲する。

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さてそんな中で主人公のメノウが二つの巨大感情を向けられているのが百合的な見所である。メノウとモモは「とある科学の超電磁砲」の美琴と黒子みたいな感じなんだけど黒子が重すぎ。メノウとアカリはアカリ側からの好意が最初からMAXというライトノベルではありがちな展開にこの作品ならではの理由がちゃんと付いていて、一方でメノウはアカリを殺す機会を伺っていてという複雑な関係が凄い。

編集にTwitterによるとめでたいことに結構売れているようだ。近年の百合の浸透によって売れる地盤が出来ていたのかな……と思う一方で、「過去にも女性主人公で百合要素のある作品が受賞したことが何度かあるが、その作者の以降の作品で百合傾向の作品が続くことは少ない」と聞くので、本作品が呼び水になって貰えると嬉しいところだ。

余談であるがこの作品に限らずGA文庫はシリーズの第1巻をサブスクリプションに入れて集客する方針をとっているらしく、本作も発売日の時点でKindle Unlimited入りしている。……えっ?私ですか?私はBook Walkerで購入した後知りました。


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