2025年放映。ファーストガンダムのif作品という位置づけで、個人的には「既に古典に差し掛かったガンダムという作品を現代の視点で再解釈して構成する」というのを期待していたのだが、そういう感じでは無かった。一方でSNSウケは近年で最高だったので、現代でウケるにはどうしたらよいかについてチューニングされた作品だったという印象。
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作品紹介
宇宙に浮かぶスペース・コロニーで平穏に暮らしていた女子高生アマテ・ユズリハは、少女ニャアンと出会ったことで、非合法なモビルスーツ決闘競技《クランバトル》に巻き込まれる。
エントリーネーム《マチュ》を名乗るアマテは、 GQuuuuuuX ジークアクス を駆り、苛烈なバトルの日々に身を投じていく。
同じ頃、宇宙軍と警察の双方から追われていた正体不明のモビルスーツ《ガンダム》と、そのパイロットの少年シュウジが彼女の前に姿を現す。
そして、世界は新たな時代を迎えようとしていた。 - 機動戦士Gundam GQuuuuuuX公式サイト
前置き
ガンダムシリーズは本作の主な元ネタとなるファースト・Ζを含めて映像として出ているものは大体視聴済み。そういうわけで概ね出てきたものの文脈は読み取れる立場であった。
なんだから「乗るしかない!久しぶりにやってきた超盛り上がるオリジナルアニメのビッグウェーブに!」となっても良さそうなのだが、なんかノれなかった。先行の劇場版公開時点から大盛り上がりだったわけだけど、なんかある程度以上盛り上がっていると逆にいいかな……ってなった感じだろうか。まぁ、その割にはバスク・オムで散々笑ってたりもしたんですが……。
感想
この文章を書いているのは最終回が放映されて数日経過して概ね感想も出揃った時期なのだが、放送終了してすぐの熱気に溢れた賛の評価がSNSに溢れた後、note等の個人サイトに否の評価が並ぶという形で概ねどの層に好評でどの層に否定されたのかがハッキリし始めた頃だと思う。個人ブログに書いている本記事もまさしくその法則通り否定的な内容となる。
あんまり個人的には好きでは無いのだが、今年どころかここ数年でもっとも話題となり、(この言葉は好きでは無いのだが)覇権と呼べるに相応しいアニメ作品となったことは紛れもない事実である。バンダイやサンライズがずっと悲願していた「若年層をガンダムIPに連れてくる」をもっとも達成したのも本作で、先行劇場版が話題になった時期からもはや古典にさし掛かったファーストガンダムを見ることになった人々が続出した。
配信ですぐ見られる時代になっていることが大きく影響していることは疑いようも無いが、かつてSDガンダムという新規IPまで作って若年層開拓を行っていたわけで、あのときバンダイがやりたかったことを何倍にもして成し遂げたのが結局これかぁという気持ちがある。
近年の流れを追っていくなら『鉄血のオルフェンズ』がネット上で壮絶な拒否反応を示されたことを反省・研究し、続く『水星の魔女』はSNSウケがかなり良い作品として成功し、本作はそれを更に越えてSNSウケ大成功という結果になった。原因としては「いつもは批評家ヅラしているガノタ達がこれは絶賛していた」という点が結局大きい感じかな……。本作のもっとも滑稽なのがその辺だとも思うのだけど、SNSウケ最大値という事実が明白である以上、ガンダムどころか今後は各IPがメディア運営方針の根拠としていくんだろうな。
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途中までは色々考察されていたけど乃木坂ネタと製作初期の時期の時事ネタが入っていることが判明して一気に沈静化したというのが色んな意味で本作のハイライトだった。しょうもない元ネタ自体は歴代のガンダムでもいくらでもあったけど、そこで考察勢が醒めてバズ一本で食っていく感じになった雰囲気がある。
ここまで書いてきて内容に全然触れていない。触れていないんだけど、内容に関して書くことあんまり無い気がするんだよな。総評するとマチュ・ニャアンの物語として描くならファーストifの部分が要らなくて、ファーストifとして描くならマチュ・ニャアンが要らない、マチュ・ニャアンのところにシュウジを入れていないのは、彼はオリジナルキャラとしてすらカウントできないって感じかな。
描写が足りないというか基本的に原作由来のキャラクターは全然描写をやりきる気が無く、ファースト履修してないとナニコレ感凄いんじゃ無いかな。未履修の人はいきなり出てきたアルテイシアなるキャラクターがいきなり出てきた謎の建造物(ズムシティ)にいるオチを理解できたんだろうか?
原作の料理の仕方もあんまり上手くないというかメインになっているシャアは未視聴勢からは全然人物像が分からず、履修組からは「ままならなさ」や「みっともなさ」という彼の最大の魅力が消えて「政治がアルテイシアに投げられても気にする様子が無い」という解釈違いのあるキャラになってしまったと思う。
一方で原作では全然描写の無かったシャリア・ブルがメインもメインの活躍ぶりなので、全体を総括すると「原作で描写の多いキャラは原作通りに動かせず、描写が少なくて余白の多いキャラは解釈違いを気にせずに動かせた」という「扱い方あんまし上手くなかったね……」な評価になるんじゃないだろうか。
終わりに
途中でも触れたけどSNSウケ大成功作として各IPが参考にしていくのはツラいな。せっかくララァをシャアと切り離して自由に出来たのに結局当人と会うオチが好意的に受け止められているあたり、その辺気にするような人間の意見が最大公約数になるはずもない現実を可視化されてるようなもんで、まぁそういう人は客じゃないってことなんだろうな。
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