2016年度アカデミー作品賞受賞作品。だが「よく分かんないけどアカデミー賞だから凄いんでしょ?」みたいな気持ちで行くと、なんかわけわからん……みたいなモヤモヤで終わることになるはずだ。
同性愛、麻薬、家庭不和、黒人社会という重いテーマの絡んだ玄人好みの純文学的な映画。こういう映画は一人で見るに限る。
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マイアミの貧困地域で暮らす内気な少年シャロンは、学校では「チビ」と呼ばれていじめられ、家庭では麻薬常習者の母親ポーラから育児放棄されていた。そんなシャロンに優しく接してくれるのは、近所に住む麻薬ディーラーのフアン夫妻と、唯一の男友達であるケヴィンだけ。やがてシャロンは、ケヴィンに対して友情以上の思いを抱くようになるが、自分が暮らすコミュニティではこの感情が決して受け入れてもらえないことに気づき、誰にも思いを打ち明けられずにいた。そんな中、ある事件が起こり……。 - 映画.com
元々アカデミー作品賞はその当時の(アメリカの)世相を多分に反映しているが、今回もオープンな差別を行うトランプ政権とその支持者に対するリベラルの反発が大きく影響している。マイノリティについての映画であり、見る側に要求する水準が高い、いかにも賞を取りそうな内容だ(もっとも、こういう作品に賞を取らせたいという気持ちはよく理解できるが)。
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その辺を理解したうえで見ないと大変である。激しいアクションはまるで無く、会話シーンが大半を占め、静かなまま進む。カメラも長回しを多用した独特なもので、こういう演出から読み取っていかなければいけない。
そして語られていないことも多い。幼少期、少年期、青年期の三部に分けられている本作だが、重要キャラであるフアンが少年期の時点で何の説明もなく既に死んでいたり、ケヴィンがシャロンにモーションをかけるに至った理由も分からない。
ラストは少々唐突気味に感じたが、今まで寝るたびに散々過去の亡霊に苦しめられてきたシャロンが、ケヴィンの腕の中ではブルーに映る過去の自分を回想していることに救いを感じられた。子供を愛するべき時に愛情を注がなかった母親と和解し、作中二回も「知らないくせに」と発言するケヴィンへの想いを受け入れられてようやく安堵の眠りにつくことが出来たのである。
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