週刊少年ジャンプ掲載。基本的な考証の甘さと、漫画家の主人公が作品を盗作する展開の割にピカレスクロマンには振らない内容で、おそらく今年のジャンプでは断トツで叩かれる作品となった。
私は判官贔屓というか、ある程度叩かれている作品はもう自分がわざわざ嫌いになることもないな……って気持ちになるからか、この作品嫌いではない。少なくとも連載を読んでいて「一体次回はどうなってしまうんだ!?」という気持ちにさせるという点では凄かったと思う。
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曇天の空に、冷たい雨が刺す。
この夢は諦めよう。そう決意した瞬間だった。
響き渡る雷鳴。
そこには、なんと「未来のジャンプ」が!週刊少年ジャンプでの連載を夢見る熱き新人漫画家・佐々木哲平。
ある日、彼のもとに「10年後のジャンプ」が届く。
時空をこえた出会いは偶然か、必然か。
数奇な運命は大きなうねりとなって、廻り始める...時限、逆流!運命、交錯!
来るはずのなかった明日へ――衝撃のタイムスペクタクル巨編、開幕‼ - 集英社
連載
週刊少年ジャンプを電子版で購読しているので毎週読んでいたのだが、最終巻となる2巻が発売されて書き下ろしでまたザワついていたので我慢できずに買ってしまった。私はファンだったのかも知れない……。全2巻だから1000円もしないけどね。
初っぱなから間が悪いというか、記録的なヒットをした鬼滅の刃の最終回掲載号に第1話が掲載された(なので最終回だから記念に取っておいた鬼滅の刃ファンは表紙見るたびに哲平のアップを見ることになるわけだ)。最初は「シュタインズゲートのパクリが始まったぞ!」ってなったんだっけ。この後もっと色々有りすぎて凄い過去のことに思える……という以前に、「進撃の巨人→魔女の守人」、「ハリポタ→マッシュル」の流れを踏まえるとこれに関しては作者ばかり責められないと思う。
連載中はまぁ相当に叩かれた。とにかく考証が凄い甘くて隙だらけなので、ジャンプが発売するたびにこれに関する話題が吹き上がる状態だった(ので話題性だけはずば抜けていた)。
結局、大抵3巻までは描かせる週刊少年ジャンプにおいて2巻分で打ち切りになるんだけど、「最悪のエンディングを迎えるぞ!」とか言われてたのに、最終回数周前にアクタージュ(記事)がジャンプ史上(というか漫画史上)に残る最悪の終わり方をして、そういう意味でもなんか中途半端であった。
そのときゴシップ的な話題がそっちに集中してこっちがあんまり話題にならなくなったのを見て「ああ、本当に何かを叩きたい人がこの時集まっていたのがこの作品ってだけなんだなぁ」となってなんか悲しくなった。
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書き下ろし
2巻の書き下ろしであるが、これ読んだら何やりたかったのか分かるかなと思ったら特にそんなことなかった。考証の無茶苦茶さも相変わらずで「藍野さんに返すんだ!」と言っていたホワイトナイトで稼いだお金の返し方が自宅の前に置くだけ。事件性を疑われるとか、贈与税脱税とか、これからも入ってくる印税どうするのとか、知財を盗むことの重大さを逆説的に示したようなことになってしまった。
多分大抵の人は結婚して同じ財産になるオチを予想してたと思うのだが、最終回で結婚指輪してたイツキちゃんの相手がアシスタント仲間の人だったのは驚いた。確かに仲良かったね。哲平とは年齢差も有ったしなぁ……というところで考えてしまうのだが連載開始時に25歳の主人公って冒険してるなぁ。大抵教師にして中高生のキャラを絡ませるんだけどね。『暗殺教室』とか『地獄先生ぬ~べ~』みたいに。
名前だけ出ていた師匠キャラが出たり、大半の読者が哲平の未来の姿だと思っていたお爺ちゃんが実はブリキ君(?)の更に上の上位存在だったり打ち切りでやれなかったことをいくつか回収している(と思われる)。のだが最後まで読んでもやっぱり「連載が続いた場合どうするつもりだったんだ……?」という疑問はつきない。
終わりに
ホワイトナイトを読んだ感動した主人公が作者の死で終わることに衝撃を受け「ゴーストライターになってでもあの偉大な作品を世に伝える」ことを決意する、みたいな内容だったらそんなに叩かれなかったんだろうなぁ。ただ考証の甘さは結局変わらないから、そもそも現代日本を舞台にした作品じゃないほうがいいんだろうなって……。
この作品は本来ジャンプ+に掲載されるはずだったものを色々あって本誌掲載になったそうなのだが、それが一番良くなかったのだと思う。哲平はたしかにクズなのかもしれないが『何をやっても粗が出る凡人』というものが個人的には『味』だと感じた。そしてその『味』って少年漫画じゃなくて青年漫画の『味』だなあって。
こういう作品がやたら叩かれていると「こいつらが少年漫画だのライトノベルを標的にするのは「これなら自分でも叩けるから」なんだよなぁ……」という気持ちに毎回なる。多分彼らの中には「週刊少年ジャンプの血統主義」を叩いている人間が多分にいると思うのだが、『たまたま大きな力を手に入れてしまった凡人』である哲平も同じように叩いてるんなら、「才能のある主人公が超人的に活躍する血統主義で正しいのでは?」としか言えない。
そういうわけで考証の甘さを指摘しつつ作品自体は嫌いになれないよという感じなのだった。やっぱり私はファンだったのかも知れないね。
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