パイナップルARMY 全6巻 – 作:工藤かずや 画:浦沢直樹


1985~1988年連載の浦沢直樹連載デビュー作。戦闘インストラクターを務める主人公が、戦闘訓練を必要とする訳ありの依頼者を通して事件に巻き込まれていく様を1話完結形式で描いていくハードボイルド連作短編。

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あらすじ/ニュ-ヨ-クの街角で、ある1人の刑事が何者かにひき殺された。そしてまた、彼の遺族である娘たちも何者かによって付け狙われていた。姉妹たちは、自身の身を守るために民間軍事援助組織(CMA)の戦闘インストラクタ-であるジェド・豪士に護衛を依頼するが…(第1話) - 小学館

好きな漫画を言えと言われたら『マスターキートン』を必ず挙げる私なのだが、気になりつつ今まで読んでいなかった作品。もっと早く読んでおけば良かった。やっぱり自分はこういう作品好きだ。多分電子書籍で出ていたらもっと早く読んでいたと思うのだが、浦沢先生は電子書籍反対派で著作が全部紙だけなんだよな。仕方が無いので文庫版全6巻を購入した。

『マスターキートン』の諸外国の社会問題に絡んだヒューマンドラマが1話完結で出てくるのがすごい好きなのだが、大体同じ路線の作品。『マスターキートン』が保険調査員(オプ)という形でイザコザに巻き込まれていく話なら、こちらは戦闘インストラクターという形でイザコザに巻き込まれていく。戦闘インストラクターって設定はよく考えたなぁと思う。戦闘訓練を必要としている人なんて確実に訳アリだし、基本的に戦うのは依頼者なので最強の主人公が活躍してばっかの話にならずに済む。CMAはいわゆるPMC(民間軍事会社)の一種なんだけど、連載当時PMCなんて全然浸透してなかっただろうから先見性を感じるな。

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原作の工藤かずや先生は小説家、劇画原作者で『ゴルゴ13』の原作(はチーム制のあの作品だから複数いるんだろうけど)も担当している人らしい。アカデミックなエピソードに時々ミリタリーが入る『マスターキートン』と違って、本作はミリタリーに大分寄った作風なので直球な人連れてきたんだな。そういう作風故か兵器を使ったりするシーンで見開きのドーン!って作画があるのが浦沢先生の後の作品を読んだ印象からすると意外だ。電子書籍に反対派の人なのに一番影響受ける見開き書いてる印象がなかったけど、本作では結構描いてたんだな。エピソードはヒューマンドラマよりハードボイルドと言うべき渋い話が多く、よくこのページ数(24P)にこんな詰め込めるなぁ、と感心するしきりだ。まぁ後半の方に行くと「えっここで終わり?」みたいな話もチラホラ出てくるんだけれど。

ラストの数話は今までのキャラクター総力戦。先生このキャラ一応覚えてたんだみたいなキャラまで出てくる。終わり方が大分唐突で最初飲み込めなかったが、実は1話が時系列上一番最後で最終回だったってことね。ファイブスター物語(記事)みたいなもんか(まぁあれの1話は時系列上最後でも何でも無いけど)。そういうわけで豪士は生きてるってことでいいんだけど、謎の日系人テロリスト小東夷(シャオトンイー)の正体とか正直ぶん投げた印象がある。

浦沢先生は本作、YAWARA、マスターキートン、Happy!の後、謎で読者の期待を煽りながらやたら長く続く作品ばっかり書くようになってしまった。アレはアレで面白いんだけど大体破綻してあんまし……な結果になったりするし、こっちの方式の方がずっとあってると思う。本作も『マスターキートン』も原作有りだけど、『マスターキートン』なんて原作者の勝鹿北星先生が途中から書かなくなって浦沢先生と編集で話考えてたらしいから全然行けると思うんだけどなぁ。


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