【推しの子】 – 赤坂アカ 横槍メンゴ

2020年~2024年連載。「かぐや様は告らせたい」作者、赤坂アカ原作の作品で、アニメ化をきっかけにそれまで読んでいた読者が唖然とするほどの大ヒットとなった。

掲載誌のヤングジャンプで本日最終回を迎えたわけだが、色んな意味で「何だったんだろう……」となる作品である。

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作品紹介

地方都市で、産婦人科医として働くゴロー。芸能界とは無縁の日々。一方、彼の“推し”のアイドル「B小町」のアイは、スターダムを上り始めていた。そんな二人が“最悪”の出会いを果たし、運命が動き出す…!?

“赤坂アカ×横槍メンゴ”の豪華タッグが新たな切り口で芸能界を描く衝撃作!! - ヤングジャンプ公式サイト

前置き

ヤングジャンプで読んでいたが、世間的には1週遅れのジャンプ+で読んでいる人の方が多かったのかな。

昔から読んでいた人と、外から来た人の温度差の乖離が結構酷い作品だった気がする。でも今、最終回を経て大体同じ温度になっているんじゃないか。アニメ化する頃には「かぐや様」から読んでいる読者の感心は大分薄れていたと思うのだが、まさかアニメのOPが全然ターゲットでも無かった低年齢層の少女を中心に空前の大ヒットするとは……。

このせいで「じゃあな推しの子。YOASOBIと同じ時代に産まれただけの凡作」って言われてて笑ってしまった。ここまで世間を騒がせておいて凡作は無いだろ!この台詞の元ネタの「呪術廻戦」もそうなんだけど、「この作品は大ヒット作品である、という商売」に関して集英社は本当にやり手になった。

感想

どこかのインタビューで「アイを殺すことに決めたのは連載が始まってから」という主旨の発言をしていて「そんなんで行けるもんなの?」と思ったが、実際行けなかった……。

「最終回まで残り○話!」と煽りながらアクアの水没に3回も尺割いたペース配分は凄い(「ガンダムAGEの終盤でジラード・スプリガンに3話使ったの思い出した」ってコメントを見かけて不覚にも笑ってしまった。あるよねそういうの)。その枠、ルビーの立ち直りに使えないかな……。

どこに尺割いてどこがダイジェストになるかで、どこに興味があってどこに無いのか、が大体分かってしまって辛い。終盤だけでなく全体的にこの傾向があるのだが、アイドルを題材にしているのにこんなにアイドルに興味が無くて一方でヒットしている作品って、後にも先にもこの作品だけなんじゃないだろうか?

現代版「ガラスの仮面」を目指しているという主旨の発言もあったと思うのだが、描きたかったのは演劇論とかだったんだろうなぁ。バトル漫画の解説みたいなシーンが入ったの2.5次元編のとき位だもんね。ルビーのライブとかではほとんどこういう描写がなくて毎回ダイジェストなので本当に興味無いんだよな……。アイドル論だって真面目にやれば十分面白くなるような気もするのに。

最終回を迎えて改めて「あれって何だったの?」ってコメントがわんさと寄せられているが、こういうこと考えてもしょうがないんだよな。「誰が何を知っていて何を知らないか」の把握を全然出来ていないというか、もはややる気無いように見える。

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一つ一つ挙げていくとキリが無いんだけど、終盤で言うなら犯人分かっていたのに黙っていたことになってしまった社長とか、アクアの死亡理由を理解している感じになってしまって遺体損壊をやらかした重曹ちゃんとか。アクアが死んだ理由を知ってるのは、ぷにあなカラスちゃんとアカネちゃんだけなので、「カミキに殺された完全な被害者」として扱われていないとおかしいんだけど、こうなってしまう。

そんな結果なんだけど、アカネちゃんの星野アイ・インストールとか瞬間最大風速は凄くて、どうしてもそういうこと言われるんだよなぁ。重曹ちゃんの「あんたの【推しの子】になってやる」とか、なんか期待はさせるんだよね……。

余談

完全に余談なんだけど赤坂アカ先生は、ゲーム会社「クインテット」のプロデューサーを務めた曽根康征氏の息子さんなんだよね。

「クインテット」はスーパーファミコン時代の会社で、「ソウルブレイダー」「ガイア幻想記」「天地創造」のソウル三部作とか、リメイクもされた「アクトレイザー」の会社。「天地創造」のエンディングで脱水症状になるかと思うくらい号泣した私としては、ああいう感情を読者に持って貰いたいと思っているのは理解できる。自分の父親がそういうことやっていたら、思うところあるよなぁ。

シリアスで評価されたい人なんだと思うけど、その方向の才能は無いんだよな……。普通そういう人はこうやって悪目立ちもせず沈んでいくだけなんだけど、商売として読者を焚き付ける才能は本当にあるんだよなぁ。その辺のミスマッチというか、それが両立するのって良くも悪くも凄いな、という複雑な感情がある。

昔からの読者がもうすっかり惰性で読んでいる時期にもう一度盛り上がったのがゴローバレしたあとのアクルビインモラルへの期待だったわけで、結局本作に求められていたのってその辺だった。そういう部分も含めて「ハヤテのごとく!」の畑健二郎先生なんかと似た印象を受ける。

終わりに

ここ1~2年はヤングジャンプで「ジャンケットバンク」以外に読んでいる作品の一つくらいだったのだが、とうとう終わってしまった。……と思ったら

新連載やるらしい。なんだろうな、なんかもう漫画なんてやりたくないんじゃないか、という印象なんだけどそうでもないんだろうか。

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