こぐまレンサ 完全版 – ロクニシコージ

前半はブラックユーモア溢れる短編集、後半は一見無関係に思える前半にちりばめられた伏線が回収されるミステリ、という凝った作品。小説などではありそうだが漫画ではなかなか見られないタイプの構成で思わず唸る。

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どこで見たのか覚えていないのだが、伏線回収が凄い作品として挙げられていたので興味を持った作品。

読んでみてのとりあえずの感想は「世にも奇妙な物語」や「笑ゥせぇるすまん」のような人間の弱さや醜さに焦点を当てた一話完結のブラックユーモアもの、というものだった。実際前半はそういう風に捉えられるように描かれていて、露悪的な内容と正直あまり高いとは言えない画力も相まって読むのがツラかった。のだがしばらく読んでいって実はこの作品が上遠野浩平ばりの人間交差点状態の話であると知って驚いた。伏線で評価されるのも理解出来る。

前半の描写で完全に死神的な狂言回しという印象のこぐまだが、読み終わると印象が大分変わる。というか最後まで読むと「なんで君、風船使いみたいになったの?」って言いたくなる。このへんは伝記・ファンタジーというか、現代おとぎ話みたいな話なんだな。

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ヤングマガジン掲載だったそうだが、これを連載で追うのは相当しんどいなぁ……。自分が読んだのは、元々全2巻だったものをまとめて1冊にした完全版だったのだが、編集がこうした気持ちはよく分かる。一気読みさせないとなかなか良さに気付いて貰えないと思うぞ。読み終わると「凄い!」ってなるんだけど。

終盤同じお話の中ですら時系列が行き来したりするので自分でも理解出来ているかどうか若干不安ではある。たとえば「三井がチチェのラストシーンをいう台詞と、こぐまと水島君のお別れのシーンって同時進行みたいに描かれてるけどこれ実際には10年くらい離れてるよね?」とか「垣内がこぐまを召喚(?)した時点で、こぐま本人まだ生きてて矛盾してない?」とか。絵でザッピング出来る漫画の媒体ならではみたいなとこあるような。

弱い人間を露悪的に描く作品って「それを見て悦に入る読者像(とそれを狙う作者)」がちらついて基本的に苦手なのだが、この作品は前半そういう風に見えて後半でまさしくそこを突いてくるようなオチだったので不思議な読後感であった。

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