WE3 ウィースリー – グラント・モリソン

非常に斬新な漫画表現が興味深いが、手間のかかる絵作りもドラマを作りにくい設定も合わせて非常に孤高な存在になってしまった印象の作品。

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物語の主人公は、政府に大量虐殺兵器に改造された犬、猫、兎の3匹。ある日、その政府は彼らを廃棄処分にすることを決定する。翻弄された彼らは政府の追手から逃げていくのだが......。 - ShoPro BOOKS&DVD

『バットマン:アーカムアサイラム』(記事)等のライターとして知られるグラント・モリソン作。DCやマーベルのユニバースとは無関係の独立した作品である。

この作品で最大に特筆すべきは実験的というか前衛的なコマ表現である。日本でもアメリカでもめったにお目にかからない、幾何学的配置ともいうべきコマ割りと大胆な見開きによる表現が目白押し。日本の漫画に慣れた人間がアメコミを読むと、グラフィックノベルという表現がしっくりくるような情報伝達の作法に戸惑うが、この作品は更にその傾向が強い。

ネット上の書評で「非常に面白い表現方法を使うが、残念ながらフォロワーが続かなかった」というものを見た(のがきっかけでこの本を読んだ)のだが、続かなかった理由はよく分かる。巻末にどのように絵を作っていったかのメイキングが掲載されているがこの方法をどの作品も取っていられないだろう。監視カメラのシーンなんかが特にそうだが、手間がかかりすぎる。

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そしてお話の方も広がりを持たせにくい。機械化された動物たちが主人公であるが、人間と同じくらいの知能を持っていたらアメコミ特有のウジウジエピソードを作れもしたのかもしれないが、動物の知能からそんなに離れていない為、彼ら主軸でのドラマは作りようもない。そんなだが残酷な描写も多い中、一応はハッピーエンドに終わって良かった。ちなみに終盤一番思ったことは「コード外したら機械と体って分離できるの?」であった。一体化してるもんだと思ってた。

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