ブギーポップ・ダウトフル 不可抗力のラビット・ラン – 上遠野浩平

上遠野浩平のブギーポップシリーズ21冊目。

九連内朱巳が統和機構の実験と称して身寄りのない少年少女を半ば慈善事業的に助けていたら、その中にMPLSがいててんやわんやという話。

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街から少年少女が消える〈計画〉を巡って、九連内朱巳と羽原健太郎、二人の天才が対立する。互いの姿を相手に見せない息詰まる頭脳戦の果てに待つのは、しかし彼らの想像も及ばぬ混沌と虚無の産物“ラビット・ラン”だった。何もかも踏みにじり、一切の反省を持たない無邪気な悪意が拡散し、世界が抵抗不能の破滅に汚染されていくのを彼女らは阻止できるのか……? - 電撃文庫

不良の更生で感動してしまうオカン体質の萌えキャラになった朱巳と、そんなこととは露ほど知らず少年少女を助けるために単身乗り込む健太郎が主人公となる本作であるが、この二人って凪を通じてとっくに知り合いだと思ってたから、まず面識がないことに驚いた。

目に映る者、この世のあらゆる者が許せない、とでもいうかのように、ぶつかり合い、殴り合い、嚙みつき合っている。もはや知性など感じられない。大混乱であり、秩序など存在していないように思える。しかし、そこには歴然とした統一があるのだった。全員、完全に同じような心のブレ方をしているのだった。そこにはこれまで須奈緒が世の中に視ていた、デタラメな無秩序はなかった。各人がてんで勝手なことを悩んでいた光景はそこにはなかった。皆が同じ方を向いて、同じように動いている。そこにはもう、いかなる断絶もない。誰も孤独ではない。すべてが失われてしまっているのだから。

いつの間にか統和機構ヤベえ、からMPLSヤベえに替わっていったブギーポップシリーズであるが、今回も久々に『世界の危機』を感じた。その辺にいる少女がこんな能力持ってて、暴発して感染していくともう本人にも止められないとか酷すぎる。ジョジョのサバイバーみたいだ。

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序盤の方でブギーポップが朱巳に対して

「世界を〝大それたこと〟と考えることが、既に間違っているんだよ。世界はいつだって、君たちと地続きであり、すべての行動は世界そのものと連動しているんだ。君が、自分のしていることがささやかなことであり、大勢に関係ないとタカをくくることが、そのまま世界の無責任さにつながっているんだよ」

といういかにも上遠野浩平なシーンがあるのだが、人間が些細と思っている感情がこんな物理的に影響及ぼすことがあるのにこの世界よく平和を保ってるよな。

朱巳を通じてどうやら健太郎も統和機構入りするという展開で終了。凪は釘斗博士と協力してるし、もう緩やかに全体的に味方になってるような気がする。それでも『世界の危機』が偏在するのが上遠野ワールドなんだけれども。

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