1998年に実際に起きた事件を元にしたノンフィクション映画。
政治雑誌の「The New Republic(ザ・ニュー・レパブリック誌)」は大統領機に乗せられるような伝統のある雑誌であったが、そこに所属する若手スター記者スティーヴン・グラスが約三年間にわたって捏造記事を書いていたことが明らかになるというスキャンダルを映像化している。
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あるときザ・ニュー・レパブリック誌にスティーヴンの「ハッカー天国」という記事が掲載される。天才ハッカー少年が企業サイトをハッキングし、その企業から多額の報奨金を手に入れたという内容であるが、フォーブスのデジタル部門の記者であるアダムがこの内容を何故他紙にすっぱ抜かれたのかと上司に問い詰められたことから調査を開始。結果、その少年も企業も記事に出てくるものはすべて実在しないということを突き止める。こうしてザ・ニュー・レパブリックの編集長になったばかりのチャックは、スティーヴンの嘘を暴いていくことになった。
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映画の内容がどれほど実態に即しているのかは不明だが、信頼されている編集長マイケルを社長が単なる口論を理由に首にして後釜には自分にいい顔をしていたチャックを置くという人事を見ると、そもそもコーポレート・ガバナンスがまっとうに機能していたかどうかが疑わしいきらいがある。作中の描写からすると記事が出来てから掲載されるまでに厳しいチェックがあるように見えるが、実際には捏造記事を止められなかったのも、そのあたりに原因があるのではないだろうか。
それにしてもチャックが妙に低い評価受けている印象が強い。作中で色々悪いことを言われているのだが、グラスの嘘が発覚した後にも暴いたフォーブスの記者たちから彼を庇う方向で動くし裏取の為に自ら現場にも赴くし、前編集長の時代からあった膿を取り除く羽目になって大変だという感想である。嘘八百だったスティーヴンをまわりが庇って、そんな状況を切り抜けなければならなかったチャックがやたらに悪口を言われる、というのが悲しい。コミュニケーション力や人間力というのか、相手に好かれる能力があるとこんなに待遇が違うんだなぁ。
スティーヴンの所業がなぜまかり通ったのか?という理由の一つは、劇中でチャックが発言しているように彼の記事がエンターテイメントだったからであり、それは真実よりも楽しい嘘の方が好まれたということを意味している。原題のShatterd GlassはStephen Glassの名字から取られている洒落たタイトルであるが、邦題である「ニュースの天才」もそのへんを踏まえた皮肉なタイトルであると言える。
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