ウォーターゲート事件の内部告発者、ディープ・スロートことマーク・フェルトを主人公としたノンフィクション映画。
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「ウォーターゲート事件」の全容と事件を内部告発したFBI副長官の姿を、リーアム・ニーソン主演で実話をもとに映画化したサスペンスドラマ。アメリカ合衆国史上初めて任期半ばで辞任に追い込まれたリチャード・ニクソン大統領。その引き金となったウォーターゲート事件の捜査の指揮にあたったFBI副長官マーク・フェルトは、なかなか進展しない捜査の裏にホワイトハウスが捜査妨害をしていることを察知し、事件自体がホワイトハウスの陰謀によるものであることを悟る。大統領に忠実なL・パトリック・グレイFBI長官に捜査協力が期待できない中、フェルトは事件の真相を明るみにするため、大胆な決断をする。 - 映画.com
以前からウォーターゲート事件に興味を持っていたのだが、この映画がやるのをきっかけに『大統領の陰謀 ニクソンを追いつめた300日』(記事)、それを映画化した『大統領の陰謀』(記事)、ディープ・スロートの正体露見後に事件当時リークを受けていた記者ボブ・ウッドワード本人によって書かれた『ディープ・スロート 大統領を葬った男』(記事)を予習した上で視聴した。
本映画はドナルド・トランプが大統領に就任し過激な発言と行動を繰り返すことに対するカウンターとしてウォーターゲート事件という題材が選ばれたという経緯がある(為ほぼ同じ理由でペンタゴン・ペーパーズ事件を題材にした映画(記事)も同時期に放映されている)。実話ベースである為、登場人物がどんどん出てきてほとんどが重苦しい会話シーンなのである程度状況を知っている人間でないとついていけない部分が結構あるかもしれない。
どの辺の範疇までやるのかなと思っていたが、ウォーターゲート事件よりも少し前のFBI長官エドガー・フーバーの死去から物語が始まりニクソン辞任で終わる。告発者ディープ・スロートをフィーチャーする話でその辺がメインになるかと思っていたが、リーク先であるワシントン・ポストのボブ・ウッドワードが出てくるシーンは意外にも地下駐車場で会う一回だけ。
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映画なので強調している部分があるとは思うが、2005年に公表されるまで正体がバレなかったのが不思議なくらいフェルトの動機は明確である。ウォーターゲート事件が単なる不法侵入事件ではなくホワイトハウスの不法行為の一端に過ぎなかったのと同様、フェルトのリークは事件解決だけではなくフーバー死去を好機としてFBIを掌握しようとするホワイトハウスを相手取った組織を守る戦いの一幕であった。
基本的に史実に忠実であるが、予習したからこそなんか違うなと思える部分がいくつかある。まずウッドワードにディープ・スロートという綽名を知らされる場面であるが、この呼び名はワシントン・ポスト内の内輪でのニックネームが『大統領の陰謀』に書かれることで初めて社外に出たものなので、実際にはフェルト本人が知ったのもこのタイミングである。終盤に行くにしたがってこういう傾向が強くなる印象があり、終盤に表彰を受けるシーンがあったがフェルトは1973年(ニクソン辞任の前年)に退職しているので四面楚歌だったあの状況でああいう対応を受けられたかどうか何とも言えない(もっとも回顧録の『The FBI pyramid from the inside』を読んでいないので、もしかしたらその辺に書いてあるのかも。娘のジョーンの失踪も事実なんだろうか)。
ラストはテロ組織ウェザー=アンダーグラウンドへの過剰な捜査(これはウォーターゲート事件とは無関係)に対する大陪審でのやり取りの後、一般市民の陪審員が質問する時間に「あなたはディープ・スロートだったのか?」と聞かれて沈黙するところで終了している。このシーンは『ディープ・スロート 大統領を葬った男』(p134)だと、調査の埒外であるとして質問を却下した司法省高官のポティンジャーがこのやり取りで事実上ディープ・スロートの正体を知ったものの現在に至るまで秘匿していたというエピソードなのだが、これをラストに持ってきたのは意外である。思えば映画版『大統領の陰謀』も「え?ここで終わり?」みたいなところがあったが、オチを付けるのが難しい題材なのでこうなったのかもしれない。
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