七夕の国 – 岩明均

1996年~1999年連載。『寄生獣』と『ヒストリエ』の間に描かれた作品で、すっかり歴史漫画家となった岩明均が「現代社会の時間軸で歴史物を描く」という難題にチャレンジしている。

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前置き

前世紀の作品であるが2024年にもなって、ディズニープラス独占配信で実写ドラマ化することが発表された。

岩明均「七夕の国」の実写ドラマ化が決定。ディズニープラスで7月から独占配信され、主演を細田佳央太が務める。

1996年から1999年にかけて週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)で連載された「七夕の国」は、 “あらゆる物に小さな穴を空ける”という、不思議だが何の役にも立たない超能力を持つ大学生・南丸洋二ことナン丸を描くSF作品。その能力により、ナン丸は世界を陥れる危機に立ち向かうことになる。単行本全4巻が刊行された。 - コミックナタリー

以前から気になりつつ読んでいなかったので、話題になるであろうこの機会にと一気読みした。4巻しかないので1日で全然読める。

感想

1ページ目でいきなり「旧暦」って出て戦国時代の話から始まるので岩明先生は本当にお好きですなぁという感じ。『雪の峠』(記事)と同様、城の建築場所で揉めるのセルフオマージュなのかな?と最初思ったが、『雪の峠』って本作の後に描いたのか。1988年~1995年に『寄生獣』、1996年~1999年に本作、その後いくつか短編描いて、2003年から『ヒストリエ』だ。

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『寄生獣』は外宇宙の生命体がやって来る話だったが、本作は大宇宙の生命体が過去にやってきていて彼らに影響を及ぼされた現代の人々の話でSF要素に歴史要素が絡んでくる。その歴史に関するオチの付け方が正直、漫画的に映える感じで無かった気がする。歴史学的には真面目にやっているんだろうけど、ハッタリが足りないというか。「こう考えられる」というアカデミック的には正しい表現を取っていて、「こうだ!」という漫画的な言い切りが足りないというか。

「窓の外」の解釈を仮説にとどめず「これが正解だ!」まで持っていきたいんだけど、歴史が好きな人にとってはやっぱり歴史の解釈を乱暴にはっきりさせるのは正しくないんだろうな。昔に起きたことを現代から見てエンタメにする難しさがあると思う。このあと『雪の峠』『ヘウレーカ』『ヒストリエ』では、現代では無く当時の時間軸で描くようになっているのでこの辺の反省があったんじゃないかな、と思ってしまう。

「えぐり魔」が社会をザワつかせていくところで、こういう社会の動き描く人だったなぁ、などと。SFファン的にはナン丸が言ってた核廃棄物の抹消の話を真面目に進めたら立派に1作品になるよなぁ。

終わりに

以前から気になっていた作品を読めて良かった。ドラマの方は……ディズニープラス独占と言うことで見る機会はまず無いと思う。Netflix独占ですら大して話題にならないのに、ディズニープラスだと余計に話題にならないだろうしなぁ。『寄生獣』のアニメ版が妙なサブタイトル付けられたりシンイチが眼鏡掛けてたりでハズした感あったのだが、岩明作品のメディア化はどこか不遇に思えるな。

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