不快な内容を伝える練習をするのに、アートに勝る教材はない。物議をかもす作品や、醜いものをテーマにした作品はいくらでもあるし、何よりアートは、鑑賞者ひとりひとりに対して平等に存在する。自発的に動いたり、返事をしたり、家までついてきたりしない。時間を超越していて、見る人の解釈にかかわらず、そこにある。 (p259)
観察力を磨くためのセミナー
を警察や大企業に行っている著者がそれを書籍化した作品。なおタイトルに名画とあるが訓練の題材として使っているだけで、本書は美術を専門とした本ではない。Sponsored Link
"知覚=五感を鍛えることで、現実世界というビッグデータを処理する。ビジネスの武器になる技法だ"
――成毛眞氏(早稲田大学ビジネスクール客員教授)フェルメールが描いた女性の表情から、あなたは何が読みとれる?
アートを分析する力は、仕事にも活かせる!バイアスにとらわれない洞察力、重要な情報を引き出す質問力、確実に理解してもらえる伝達力、失敗しない判断力など、FBIやNY市警、大手企業で実践されている手法を身につけよう。 - Hayakawa Online
副題に名画読解とあるので美術関係の本と誤解されそうだが、名画はあくまで訓練に最適な題材として使われているだけで、主題はタイトル通り「観察力を磨く」ことである。名画はどの時代にどのような背景で描かれ現在に至るまでにどのように評価されてきたかが明確なので正しく観察できているかどうかの指標として優れているというわけだ。
さて観察力が悲しいほどにない私が読んでみて、警察や大手企業に講演を行ってきた著者の実例を踏まえた解説はなるほど確かにと思ったのだが、読んだ後成長できたかっていうとなかなかそうも行かないようだ。普段はオートパイロット(と本文で表記されてるけど『ファスト&スロー』でいうシステム1だなこれ)で見過ごしていることにも、徹底的にものを観察することで気づけるようなる、というのが著者の主張でそれが丁寧に説明されている。
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個人的な良い本の条件の一つは「読んだ後には世界の見方が変わっていて、読む前には戻れない」というもので、この本も真面目に向き合って実践していけばきっとそうなったのだろうと思うのだが、自分はこの手の本で「さぁ、紙とペンを用意して実践してみましょう!」みたいに描かれていて実際にやった例しがない。この辺は実践が大事なので、実際にセミナーとかに参加した人はきっと違うんだろう。こういうものの見方が有るよってことを知れただけでも収穫としておこう。
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