1979年放映。アルカジイ&ボリス・ストルガツキイ兄弟原作のSF小説『ストーカー』(記事)を原作にアンドレイ・タルコフスキーが手がけた。原作小説同様、『2001年宇宙の旅』的な観念的な内容の作品となる。
なおタルコフスキーの映画はモスフィルムのYouTube公式チャンネルに複数アップロードされており、本作も日本語字幕有りで見ることが出来る。(記事内にリンク有り)
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作品紹介
ある小国を舞台に不可思議な立入禁止の地域である“ゾーン”に踏み込んだ三人の男たちの心理を描くSF映画。監督・美術は「鏡」のアンドレイ・タルコフスキー。アルカージーとボリスのストルガツキー兄弟の原作「路傍のピクニック」を基に彼ら自身が脚色。撮影はアレクサンドル・クニャジンスキー。音楽はエドゥアルド・アルテミエフが各々担当。出演はアレクサンドル・カイダノフスキー、アリーサ・フレインドリフ、アナトリー・ソロニーツィン、ニコライ・グリニコなど。 - 映画.com
前置き
人気FPSゲームの「S.T.A.L.K.E.R.」シリーズは本映画の原作小説「ストーカー」のオマージュ作品となる。4作目となる新作の「S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl」が2024年11月21日にリリースされたのをきっかけに原作小説を読んで、更に以前から一度は観てみたかったタルコフスキー監督の作品を観てみることにした。
タルコフスキーは本作の他に『ソラリス』も撮っていて、SFファン的には一度は作品を観てみたい監督なのである。……ちなみに「そういえば『DUNE(デューン)』もやってたんだっけ?」と思ったらそれはホドロフスキーだった。こんなもんです。ニワカなんて……。
冒頭に記述したとおり、日本語字幕有り版が公式よりYouTubeにアップロードされているので誰でも視聴できる。
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感想
「タルコフスキーの作品はどうやっても寝る」とは聞いていたが、観てみると無理もないというかカメラがゆ~っくり動いたり止まっていたりで長回しみたいになるシーンが頻繁に出てくる(そして、そこに抽象的なモノローグが被ったりする)。最初の「ベッドが映って、寝ている三人が映って、主人公がこっそりベッドから起き上がって、そこから部屋から出る」で早速5分くらい使ってて「う~ん」ってなったが、全然序の口だった。映画って回転率の為に「とにかく尺を切れ」って言われるらしいが、共産圏だと違うのか?
原作とは違ってストーカー、教授、作家と呼ばれる三人の男がゾーンに入るエピソードがほぼ全編となる。そんなので2時間以上何するのって感じだが、基本的にこの映画は「ゾーン内の美しい自然風景が上記の長回しで映って、その合間に会話劇が入る」でず~っと続いていく。
このストーカーが原作主人公のシュハルトに相当する人物であるが、「ゾーンは神聖な場所である」という主旨の発言をするくらい、原作とは全然違う人間である。シュハルトのほうは常時「ゾーンはクソだ」って言ってる感じだが、映像美にこだわるタルコフスキー映画でそれにたいしてクソ、クソって言ってられないのかもな。視聴していると「タルコフスキーが水の表現に異様に執着している」ことが嫌でも伝わってくる。途中からずっと水の音がしてるイメージなんだよな。確かに綺麗ではあるから現代で4Kとかで仕上げてきたものに需要があるのはなんとなく分かる。
原作の「願いを叶えてくれる金の玉」に着想したと思わしき「願いを叶えてくれる部屋」がゾーン内に存在し、その「部屋」を目指す侵入者たちをゾーン内の超自然現象が阻んでいるという状況らしく、原作に大量に出てきた「来訪者の遺物」は登場しない。なのでストーカーは遺物ハンターではなく、「部屋」に人を連れて行く案内人となっている。
こんな感じで原作とは大分違う話なのだが、観念的という作りであるのは同じ。「部屋」を見つけたもののそこで一悶着あって結局入らずに帰ってくる(つまり「部屋」とは何なのか!がテーマじゃ無いってことっスね)のだが、そのあと10分くらい尺が有る。何するのかと思ったら、主人公の奥さんがカメラに向かって独白してテーマ的なことを話した後、今度は主人公の娘が超能力を使える新人類になっていることを描写して終わる。なんか、もうちょっと描き方あったんじゃないかなぁって気がするな。原作小説読んでないと娘が超能力持ってる描写がかなり唐突じゃない?
終わりに
以前から一度観てみたかったタルコフスキー映画を見れて良かった。概ね事前に聞いていたとおりの印象で、まぁ『2001年宇宙の旅』方向の立ち位置・評価の作品だ。これ家で何か他のことと並行して観るんならまだしも、映画館でこれに集中するほか無い状況だと大層辛いだろうなぁ。
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