この紙きれとライターには一財産かかったが、それだけの値打ちはある──なぜなら、この二つが彼の持論の正しさを証明してくれるからだ。“〝本物”〟という言葉に実はなんの意味もない以上、“〝偽物”〟という言葉もまた無意味だ、と
SF小説家フィリップ・K・ディックの代表作。第二次世界大戦が枢軸側の勝利で終わった世界を書く歴史改変SFであり、1963年のヒューゴー賞長編小説部門を受賞している。
同様の設定の歴史改変作品は他にもあるが、『作中で、連合側が勝利した設定の小説がブームになっている』という入れ子の構造を採用し、著者が書き続けた「本物と偽物」というテーマに絡めたところがフィリップ・K・ディックのオリジナリティを発揮していると言える。