タニス・リー『冬物語』

ファンタジー作家タニス・リーの中編2編で構成された書籍で、表題作の『冬物語』の主人公オアイーヴは、ゲーム『ロマンシングサガ2』に登場するオアイーブの元ネタとされている。

それでリメイク作品の『ロマンシングサガ2 リベンジオブセブン』の発売をきっかけに読んでみたのだが、あくまで名前をオマージュしていると言うだけで各要素は特に似通っていない気がする。後述するが、河津秋敏によると特定のキャラクターというより「タニス・リー作品自体がロマンシングサガ全体のモチーフになっている」という感じらしい。

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前置き

『ロマサガ2』のオアイーヴの元ネタが本作『冬物語』の主人公から来ているということだけ以前から知っていた。このたび2024年10月24日に、あのロマサガ2のリメイク作品がリリースされるということで、読んでみることにした。なお著者のタニス・リーはファンタジー界では有名な人なので名前は知っていたのだが、著書を読んだことは無い。

中編の『冬物語』と『アヴィリスの妖杯』の2作品を収録している。冒頭の画像はAmazonのリンクから来ているもので自分が購入したものと違う。自分のは昭和57年(1982年)に発行された初版で坂口尚が描いているようだ。白い背表紙のハヤカワFT文庫で番号は47。FT文庫初期の作品である。

感想

冬物語

タイムトラベル要素の入ったファンタジー小説で、序盤から出てくる要素が見事に回収される美しいプロットの作品。

邦題が『冬物語』だが、原題は『The Winter Players』。なんで意訳をしてまでシェイクスピアという世界的大御所の作品『冬物語』(こちらの原題は『The Winter's Tale』)と被せたのか、釈然としない。巻末の解説にあるように

原題の「ウィンター・プレイヤーズ」は、「わたしたちは不思議なゲームの競技者(プレイヤー)なんだ」というグレイの言葉をふまえたもの

であり、オアイーヴ、グレイ、ナイワスを巻き込む円環を書いた物語となる。終盤でオアイーヴは、旅立つことになった自分の動機が、過去に戻った自分たちの残したものから生まれている構造を理解。その結果永遠に繰り返される責め苦からグレイを救うためにオアイーヴはその円環を断ち切り、新しい世界線でグレイとオアイーヴが再会して物語は終了する。

……と言うわけだが、ロマサガ2でのオアイーブと似通う要素を探してもあんまり思い当たらなかった。そういうわけで河津秋敏のTwitterを検索してみると、下記のようなツイートを見つけることが出来た。

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読んでいるときに「グレイってキャラが出てきたぞ。まぁたまたまか」と思っていたんだけど、こっちも元ネタ(オマージュ)だったのか。グレイって本名じゃなくて「千と千尋の神隠し」の「千」的な、本人的には受け入れがたい蔑称みたいなもんなんだけどな。ちなみにグレイの本名はシルディン(p64より)。

詩人を追い掛けてストーリーを広げていくというのを実現できたのがロマサガ2でした

とあるのだけど吟遊詩人は本作には出てこないんだよな……。「聖遺物を盗んだグレイをオアイーヴが追いかけて旅をする」というのが本作の前半部分で、これがロマサガ2で詩人を探す過程であっちこっちに行かされる(で楽器が揃ってチカパ山でイーリスに会う)エピソードに繋がっているという意味だと思われる。そうするとグレイが詩人のように思われるのだが、本作のグレイって詩人ではなかったような……?

アヴィリスの妖杯

ロマサガ1にアヴィリスって居なかったっけ?と思ったが、アディリスだった。ちなみにアヴィリスは地名。

ひょんなことからアヴィリス領主の隠し財産と思われる金杯を手に入れ、これは高い価値を持っているぞと確信する主人公一行。しかし、宿でたまたま金杯の包みが取れて露わになり(ヤバい!周りのヤツらが狙って来るぞ!)と思ったら、周りのヤツらが金杯を見てドン引き。あれっ!?これもしかしてここら一帯では有名な呪いのアイテム……!?から始まる、ホラーっぽい話。呪いのアイテムを捨てる話になるのだが、解説で指摘されているように指輪物語みたいだな。

序盤で主人公の動機づけになるために出てきたと思われた少年ルーコンが終盤で重要な役割を果たして物語が終わる。冬物語同様、作者はこういう因果の話が得意なんだろうか。

終わりに

サガシリーズにはファンタジー由来の名称は他にもいくつかあるんだよな。ロマサガ2の鎧の『黒のガラドリエル』とかサガフロ2のシルマール先生なんかが指輪物語由来なんだそうだ。SFは分かるんだけど、ファンタジー分かんないから気づけていないのが多そうだ。河津神はどうも両方に通じているらしい。

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